耳鳴り みみなり| 症例集 「耳鳴り」 みみなり |
| 耳鳴り みみなり |
| 耳鳴りを訴える患者さんは大学病院の耳鼻科では３０％、人口比の１７％、高齢者では３３％といわれていて、最近では若年者の耳鳴りも増えてきました。耳鳴りとは、実際には音源がないのに何らかの音が聴こえることで、次の３タイプに分けられます。 �＼戸�的(無響室性)耳鳴り 静かな場所や、防音室に入ったとき「シーン」と聴こえることがあり、聴覚の異常ではありません。 �⊆�覚的耳鳴り 鼓膜などの中耳に異常がないにもかかわらず、特定の音色の音が時々、あるいはひっきりなしに聴こえるもので、耳鳴りを訴える人のほとんどがこのタイプです。 �Ｂ廠佚�耳鳴り まれに口のまわりの筋肉や耳の中の骨、筋の収縮音、中耳の貯留液の動く音、血管の雑音などを耳鳴りとして感じることがあります。 まず、耳鳴りを起こす病気を列挙しておきましょう。メニエール病／中耳炎／内耳炎／外リンパ漏／耳性帯状疱疹／耳管狭窄症／耳管開放症／耳硬化症／鼓膜炎／悪性腫瘍など。また、全身の病気として、低血圧や高血圧などの循環器系の疾患／糖尿病や脳神経系の疾患／自律神経失調症などでも起こります。 原因が明らかな場合にはもちろん耳鼻科や脳神経外科などで治療を受ける必要がありますが、耳鳴りの患者さんのほとんどが原因不明とされていて、とりあえず耳の血液循環を促す薬や、抗不安薬を投与されて様子をみることが多いようです。長い人では十数年も耳鳴りと付き合っていて、耳鳴りで来院したばかりの患者さんは一様にこのままずっと耳鳴りに悩まされるのかとの不安でいっぱいになっています。 ■ＳＨさん ５６歳 女性 主婦 半年ほど前から耳鳴りが続いていて、最近その音が大きくなったような気がするということで、ホームページを見て来院。耳鼻科や脳神経外科で検査をしたが特に異常が見つからないということで血流改善薬と精神安定剤を投与してもらっていたが、１週間ほど前から耳鳴りの音が大きくなってしまい、夜も眠れなくなったので軽い睡眠薬をプラスしてもらったとのこと。最近は耳鳴りが気になって趣味の社交ダンスにも行けなくなってしまったとのことです。耳鼻科では気にしすぎだと言われたそうですが、本人は耳鳴りさえ治れば社交ダンスにも行けるし、やりたいことがいっぱいあるのに、半年も通院しても治らないし、人の心を逆なでするような言い方をする耳鼻科の医師には不信感を抱いているようでした。 身体に触れると脚のむくみと足先の冷えが気になりました。脈診では明らかな腎虚でした。とにかく時間をかけて脈を調整し、むくみを取り去る治療をしました。その後耳の血流改善を目的に首から肩にかけての鍼とマッサージを行い、１回目の治療を終了しました。 治療中いろいろなお話を聞かせていただきました。特に半年前のことをいろいろ話してもらったのですが、１年ほど前から親戚との間でトラブルがあるとのことでした。ＳＨさん自身は気にしないようにと自分に言い聞かせていたようですが、頭では理解できても心が納得してないのではということに気づくことができたようです。 私たちは理不尽なことに対して怒りを覚えます。しかしそれを心の奥に沈めてしまうことが社会に適応して生きていくすべだと教えられてきました。ですから怒りを感じるということさえ無意識に抑圧しているのかもしれません。もちろん怒りをそのままぶつけてしまうことは許されません。けれど、自分は○○に対して怒っているということは認めてもいいと思います。ということで、ＳＨさんにはそういう理不尽なことには怒りを感じていいのだと伝えました。 ２回目の来院時には、耳鳴りは相変わらずだけれど、とても心が楽になって、よく眠れるようになったとのことでした。週１回の治療を６回行い、ほとんど気にならなくなったということで終了しました。 ■ＹＡさん ４１歳 男性 会社員 ３ヶ月前から頭の中でキーンという音がしていらいらすると来院されました。耳鼻科の受信の有無をきいたところ、数年前にも同じような症状で耳鼻科に行ったところ何もしてもらえなかったので直接当院にきたとのことでした。以前の耳鳴りのときにも、知り合いの鍼灸院で治療を受けたとのことで、とにかく鍼灸でやってみたいとのことでした。 ＹＡさんはとにかく何かにいらいらしていることは明らかです。体中が課緊張状態だと感じました。交感神経が高ぶり、睡眠も断続的でゆっくり眠れないとのことで、とにかく交感神経を沈めリラックスしてもらうことに心がけました。 本人は耳鳴りを訴えていましたが、胃腸の調子も良くないのではとの質問に「よく分かりますね」と答えました。目の疲労もかなりのもので、とにかく本人が気づいているかどうかはともかく、疲労が蓄積していると感じました。 週２回の治療を４回ほど続けたところで耳鳴りはすっかり良くなりました。それとともに胃腸の調子も良くなり、夜もぐっすり眠れるようになったと晴れ晴れした調子で話されました。ＹＡさんには少しでも疲れを感じたら無理をせずに休養を取ることと、ときどき来院して疲労を取り去る治療をしましょうと話しました。 労働環境は苛酷になりつつあります。休みがきちんと取れる会社もありますが、週１回の休みを取るのが精一杯というところもあります。そういう患者さんが来院されると、治療が終わった後でも心配してしまいます。 当院の耳鳴りの患者さんは二つに分類されます。１つ目はＳＨさんのように精神的ストレスによるもので、怒りを無理やり抑圧しているタイプです。２つ目はＹＡさんのように過労状態の人です。どちらもまじめで頑張りやです。ストレスのない人生はありえません。けれど、少しは自分のために時間を使いましょう。良い睡眠、楽しいひととき、おいしいものを食べて、たまにはおもいきり笑いましょう。 |
