症例集 「首こり症候群」 くびこりしょうこうぐん |
首こり症候群 くびこりしょうこうぐん |
当院には多種多様な症状の患者さんが来院されます。したがって整形外科・内科・小児科・耳鼻科・眼科・産婦人科・そして心療内科や精神科などあらゆる診療科目の知識が求められます。 当治療院は開業して35年が経過しました。ホームページで健康情報を発信するようになって10年以上になります。鍼灸治療は12経絡を調整し、その後症状に応じた治療を行います。コラムを読んでいる人はお気づきかもしれませんが、私はいろいろな症状に対して首や肩のこりをとる鍼やマッサージをしています。そうです。私は自律神経失調症や不定愁訴、うつ病やパニック障害、頭痛や不眠症、眼精疲労や耳鳴りなど、多種多様な症状の原因に首や肩のこりが関係していると考えています。 首は頭と身体を繋ぐ唯一の架け橋です。首がこることで、自律神経特に副交感神経がダメージを受けてしまいます。副交感神経は血管を広げる神経ですから、その結果として血管が収縮してしまい、ますます首がこってきます。首がこってくると副交感神経がダメージを受け、不眠症になってしまいます。ようするに首こりのサイクルに落ちてしまうのです。 以前はテレビやパソコン作業で首凝りが起きると書いてきましたが、最近では下を向いてスマートフォンを捜査することがそれに加わりました。その結果姿勢も悪くなり、子どもの首こりも増えています。 東京脳神経センターの松井 孝嘉先生は、首こりに関するたくさんの著書を出版しておられます。 首を温めれば健康になる 「首こり」をとれば90%以上完治する うつ 頭痛 めまい 不定愁訴 慢性疲労症候群・胃腸障害・ドライアイ・多汗症・ 首こりは万病のもと うつ・頭痛・慢性疲労・胃腸不良の原因は首疲労だった! 「首こり」を治せば10歳若返る! : 副交感神経アップで人生が変わる!長生きできる!! などなど。 私は鍼灸師です。ですから首こりに対するアプローチのやり方は違います。けれど、不定愁訴といわれる症状には首コリが関係しているとずっと考えていました。 ■NSさん 45歳 主婦 顎関節症(がくかんせつしょう) 食事のときに顎が痛かったり、口を開閉するときにも顎に痛みを感じるようになり、顎を開けたり閉じたりする時にカクッ・ピキッ・グニュッとするように感じ近所の歯科医院で顎関節症と診断され、明海大学へ受信されました。 明海では軽い顎関節症とのことで治療を開始しましたが、軽いといわれながらなぜかなかなか完治せず、インターネットで調べ来院されました。 NSさんはひどい首こりでした。当院では脈診をしながら自律神経の調整を丁寧に行い、首と肩のこりを取り去る施術を行いました。 もちろん強いマッサージはいけません。強いマッサージをすることで筋肉はよけいにこってしまうのです。ですから鍼治療が効果を発揮するのです。 顎関節症で来院される患者さんはたくさんおられます。顎関節症が癖になっている人もいて、そういう患者さんは当院で治療を受けることで治ってしまうと理解しておられるようです。 ■USさん 39歳 男性 会社員 就職したころから頭痛が始まり、ほとんど毎日頭痛薬を飲んでいた。薬を飲むと普通に会社に行けるので別に気にしたことはなかったが、先日テレビで薬物乱用頭痛のことを見て心配になった。頭痛専門外来への受信も考えたが、ネットでいろいろ調べていて来院したとの琴でした。 問診してみると、たまに寝つきも良くないし、目が疲れているのか痛みを感じることもあるそうで、緊張型頭痛と判断しました。 まず、いつものように脈新をし、ゆっくり脈の調整を行います。ときには腹診を行うこともあります。お腹は無関係と思われるかもしれませんが、硬いしこりを見つけることもあるのです。その後うつぶせになっていただき、首から肩、背中の状態を診ていきます。緊張型頭痛の患者さんは首から肩にかけて板のようにガチガチになっているものです。とにかくこのコリをとらないことにはどうにもなりません。この板のようなコリはゆっくり時間をかけてとる必要があります。ですから最初は鍼と軽いマッサージだけにします。数日後に来院していただくことにして1回目の治療を終えました。 3日後に2回目の治療をしました。1回目の治療後になぜか疲れを感じてしまい、その日は早めに就寝したとのことでしたが、夢も水にぐっすり眠ることができ、次の日は頭痛薬は飲まずに済ませることができたようでした。ただ、残念ながら来院時には少し頭痛がするとのことで、基本的には1回目と同じような治療を行いました。首や肩は相変わらずガチガチです。ですから丁寧な鍼治療と、優しくソフトなマッサージを行って終了しました。 その後週1回の治療を行いましたが、5回目あたりから頭痛薬なしでも過ごせるようになってきました。現在はたまに疲れたときに来院しておられますが、頭痛薬はほとんど飲むことがないと話しておられました。 ■UYさん 66歳 女性 主婦 半年ほど前から耳鳴りが始まり、近くの耳鼻科に通院している。自分では気づいてなかったが、聴力検査をしたところ、聴力がかなり低下しているとのこと、すぐにステロイドの治療が始まった。そのころからめまいも起きるようになり、利尿作用のある薬が追加された。夜は耳鳴りが気になって眠れなくなり、睡眠導入剤ももらうようになった。 1クールのステロイド療法の終了後に聴力検査を行ったところ、全く改善が見られないということで、再びステロイドの治療をすることになった。しかしそのときの耳鼻科の医師の言葉が彼女の心をすっかりなえさせてしまったのです。 「このステロイドでも治らなかったらもうどうにもならないね。まあ歳も歳なんだから諦めてもらうしかないね。もっと聴こえなくなることもあるかもね」と言ったのです。ああ、自分はこれから一生この耳鳴りと難聴が続くのかと思っただけで人生が終わってしまったように感じたそうです。 耳鼻科の医師にしてみれば全く耳が聴こえないわけじゃなし、耳鳴りにしてもそのうちに成れてしまうだろうとの気楽な言葉だったのかもしれません。それに毎日毎日そのような症状の患者さんを診ていれば感情が麻痺してしまっても仕方ないことなのかもしれません。しかし患者さんは一人ひとりがそのときには必死です。頭の中は耳鳴りと難聴のことでいっぱいなのです。 UYさんは当治療院のホームページを見つけました。そして鍼治療と、「大丈夫ですよ。必ず治りますよ」の言葉を聞くことができたのです。まだ治療を始める前にUYさんは涙を流しておられました。 まずは自律神経の状態を知る目的で脈新を行い、調整していきました。そしてうつぶせになってもらい、首や肩の状態を診ました。予想していたことですが首や肩はガチガチです。丁寧な鍼治療と優しくソフトなマッサージでこりをほぐしていきました。 最初は週2回の通院です。耳鳴りとめまいが続いている間は趣味の太極拳もお休みしてもらうことにしました。水泳もやっておられるとのことでしたが、これもしばらくはお休みです。 UYさんはどんどん元気になっていきました。耳鳴りもあまり気にならなくなりました。そして何よりあっという間に聴力が戻ったのです。 その後週1回の通院を2ヶ月ほどしてもらい、現在は月に1度の通院を続けておられます。 元気になったのはもちろん鍼治療の効果です。しかし、まず耳鼻科の医師の何気ない言葉が耳鳴りやめまいを悪化させたのではと思います。治療は薬物療法だけではないはずです。ちょっとした言葉で患者さんは傷つき症状を悪化させてしまうのです。 このように、首こりにより多種多様な症状が誘発されるのです。頭痛・耳鳴・慢性疲労・自律神経失調症・眼精疲労・めまい・不眠症・顎関節症・原因不明の歯痛・うつ病などなど。 命に関わるような病気は大きな病院で現代の医療を駆使して治してもらいましょう。けれど、普段なんとなく感じている上のような症状は、首こりを治療することで治ってしまうのです。 |