症例集   「痙性斜頸(けいせいしゃけい、頸部ジストニア)」
痙性斜頸 (けいせいしゃけい、頸部ジストニア)
 首や肩周りの筋肉が緊張状態になり、頭の位置に異常が生じることで、顔を正面に向けなくなったり、頭が前後左右に傾いたり、肩が上がったり、体がねじれたりするなど人によってさまざまな症状が現れます。軽症だと首や肩の痛みしか感じないこともあるので、肩こりと間違えてしまうことも多いです。また、頸椎に負担がかかるために骨や関節が変形してしまうことで、体を動かせる範囲が限られてしまうケースが多くみられます。痙性斜頸の症状はストレスで悪化する傾向があり、体のある部分を触ると症状が落ち着く「感覚トリック」がみられるケースも少なくありません。就寝中は症状が消失すると言われてますが、当院の患者さんでは、目覚めたときに異常な肩こりを感じると訴える人もいます。
 痙性斜頸は病気ではなく遺伝が関係している一次性ジストニアがほとんどですが、脳性麻痺や向精神薬などの薬による影響で発症する薬物性もあります。当院の患者さんにも向精神薬により頸部ジストニアを発祥した人がおられます。
 西洋医学的にはボトックス注射が第1選択であり、効果が期待できないときには手術が行われます。筋電図を用いてどの筋肉の異常が主な原因となっているかを確認し、その筋肉を支配する神経を切断する「除神経術」を行ないます.手術を始めた外科医の名前をとってBartrandの手術と呼ばれています。

痙性斜頸の鍼治療
 鍼灸師の中には痙性斜頸治療などやったことがない人も数多いと思われます。当院では比較的多く痙性斜頸の患者さんを治療していると自負しています。
 電気治療と鍼を組み合わせて治療していますが、数年前に比べて治療成績が格段に向上しています。文献を調べてもあまり例がなく、ツボの選び方や電気治療の周波数などあれこれ模索しながらの治療が続きました。また、この人にはこの周波数が著効を得たと思っても、それがそのまま他の人に有効とは限らないなどまだまだ研究しなければと思っております。

■HKさん 36歳 女性 主婦
 7年ほど前に痙性斜頸と診断を受け、あちこちの病院で治療を受けました。5年前からボトックスの治療を始め、症状が落ち着いていたが、最近ボトックス治療の効果があまり感じられなくなってきた。大学病院での手術とも考えてはいるが、とりあえず鍼治療を試してみたいとのことでした。
1回目の治療直後「ええっ!すごく楽になった」とそれはそれは喜んで帰りました。けれど、残念ながらその状態は1日しか持ちませんでした。次の治療でもやはり効果は1日で消えてしまいました。その後、電気治療の周波数を変えたり、ツボを変えたりしながらの模索が続きました。現在は週1回の治療でまあまあ楽な状態が続いています。
しかし、「これで治療は終了です」と言って挙げられません。せめて2週間に1度の治療までこぎつけることができればと願っております。

■UMさん 42歳 男性 無職
 ボトックス治療が効かなくなって除神経術を行いました。しかし、それなりの効果はあったものの、期待していたほどの著効は見られませんでした。2度目の手術も検討されたようですが、理由は分かりませんが行われず今に至っています。
 UMさんの場合は鍼治療もなかなか結果が出せず、ツボの摂り方や電気治療の周波数や時間などいろいろやってみました。現在はかなり楽になり、やはり毎週来院しておられます。
今は就職活動の真っ最中とのこと。治療を続けながら普通の生活ができることを願っています。

■KSさん 32歳 女性 事務職
 KSさんの場合は症状も軽く、ときどき病院に通院しながらの鍼治療でした。最初から症状が軽かったこともあり、鍼治療が著効を示しました。1回目の治療直後から、数年来感じたことがないくらい首が楽だと言われました。
週1回の治療を10回ほど続け、現在は隔週で通院しています。隔週の鍼治療でまっすぐ前を向くことができ、ときどきもう治ってしまったのではと思うこともあるそうです。

 痙性斜頸の治療はまだこれといったものがありません。ボトックス注射と手術でなんとかなることもありますが、完全に治すことはできないようです。鍼治療も一部の鍼灸師がいろいろ模索しながら行っている状態です。ツボの位置、パルス治療の周波数や長さなど「これだ」というものを早く見つけたいと願っております。

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