症例集   「頻尿」 ひんにょう
頻尿 ひんにょう
 おしっこの悩みはなかなか他人には話しづらいものです。近頃ではおしっこのトラブルに対処する薬や、尿漏れパンツなどのCMも増えてきました。泌尿器科の医師も増え、女性専門外来を設けるところもあります。頻尿は非常につらい症状です。仕事や学校では数時間トイレに行けないことが多く、社会生活に支障をきたすこともあります。
 最近では鍼灸で頻尿が改善されることがマスコミやホームページなので紹介されるようになり、当治療院に来院してくださる患者さんも増えました。特に女性の患者さんではなかなか泌尿器科への通院もしにくいため、当院での鍼灸治療を希望されるようです。

■排尿の仕組み
 まず、みなさんもご存知のように尿を作っているのは腎臓です。腎臓はソラマメ型をしていて左右に1対あり、成人では1個あたり約150gほどもあります。血液を濾過して老廃物を濾し取り原尿を作り、その原尿から体に必要な成分や水分を再び血液に戻していらなくなったものだけが尿として膀胱へと運ばれていきます。膀胱は一定量の尿を溜めておくことのできる袋で、約400mlほどの尿を溜めることが可能です。
 人が排尿しようとすると、脳が尿を出しても良いと判断し排尿筋に信号を送ります。信号を受け取った排尿筋が収縮して尿を尿道へ排出します。それと同時に尿道括約筋に信号が送られて括約筋が緩むことで体外に尿が排泄されるわけです。
 正常な人の排尿の頻度はだいたい7回程度です。もちろん汗をかいたときには回数が減り、水分を多く摂ったときは増えます。人の脳が、「排尿をしたい」と感じるのは膀胱に200mlほどの尿が溜まったときで、300mlくらいになると「そろそろトイレに行ったほうがいいかも」と思うのです。
 頻尿になる原因はさまざまですが、当院で治療を受けている患者さんは 過剰なストレスによる心因性頻尿、冷え性による頻尿、加齢による頻尿、便秘による頻尿などです。

■NSさん 38歳 女性 会社員
1年ほど前に会社で一人でプレゼンテーションをすることになり、初めてのことで上がってしまった。発表の最中にトイレにいきたくなってしまい、恥ずかしいとは思ったのですがトイレにいかせてもらったそうです。
その後会議のときなど頻繁にトイレにいきたくなるようになった。最近では電車に乗っても頻繁に下車してトイレにいくようになってしまい、電車にも乗れなくなってしまった。トイレがないと思うだけで尿意が起こり、もらしてしまったこともあるそうです。そうなると頭はトイレのことでいっぱいになってしまいます
病院で診察を受けたところ、心因性の頻尿とのことで精神安定剤が処方された。たしかに薬を飲むと少しは楽になるが、相変わらず会議のときは何度もトイレにいくし、電車に乗っても数駅ごとに下車してトイレにいくありさまだとのことです。
それより困るのは、薬を飲むとなんかぼうっとしてしまい、頭がうまく働かないような気がするとのことです。
ストレス性頻尿の場合過剰な緊張状態が頻尿の原因なので精神安定剤が処方されることが普通です。しかしそのせいで眠くなったり、注意力がおろそかになったりしてしまうのは困り者です。
NSさんの場合は交感神経が過度に興奮してしまうことが原因です。誰でもプレゼンや受験など普段と違うときには一時的に交感神経が過度に興奮することもあり、そのため一時的にトイレが近くなってしまうこともよくあることです。それが一時的なら良いのですが、いつまでも続くと日常生活に支障が生じてしまいます。
NSさんには毎週1回通院していただくことになりました。まず、自律神経のバランス、特に過度に興奮している交感神経を沈めるための鍼を行いました。その上で冷えに対する鍼灸治療と、治療しながらいろいろなお話を聞かせていただきました。
家ではせんねん灸をしていただきます。私がマジックで印をつけてそこにせんねん灸う行います。体質を改善するには毎日のケアが大切です。当院の治療と毎日のお灸が車の両輪のように身体を良い方向へと変えていってくれるのです。
2ヶ月ほど毎週通院していただき、電車にも長い時間でなければ乗れるようになりました。会議のときも1時間ほどならなんとか耐えられるようになったそうです。
まだまだ完治とはいきませんが、通勤で駅に着くたびに降りなくて済むようになって助かりましたと話しておられます。

■IMさん 45歳 女性 主婦
IMさんは15年ほど前から頻尿に悩まされていました。そのため仕事は諦めてしまい、家庭に閉じこもる日々が続いていました。あちこちの病院で漢方薬や精神安定剤などを処方してもらいながら、まあ主婦だしどこかが痛いわけでもないしと諦めかけていたそうです。そんなときたまたま友人とのおしゃべりで頻尿の話題になり、当院で頻尿を治してもらったという話を聞きいて、すぐ電話をしてくださいました。
IMさんの病歴は15年です。これは一筋縄ではいかないと覚悟しました。しかしいつでも奇跡は起こるものです。数十年頻尿の治療に携わっていますがこれほど劇的に完治したのにはびっくりしました。もちろんそれなりに時間はかかりました。週1回の治療で5回目あたりから劇的な効果が現れたのです。IMさんはしきりに「早く来ればよかった」と繰り返して話されました。
その後各週での治療を5回ほど続け、現在は体調管理を目的に月1度の通院をしていただいております。
IMさんは冷えが原因だと考えられます。冷えに対する漢方薬も処方されたとは思いますが、冷え性といっても体質により漢方薬の種類も違います。そのあたりが考慮された漢方薬であればもっと早く完治していたのではと残念です。

■尿失禁
 頻尿はしばしば尿失禁を伴います。脳脊髄の異常に起因するものや細菌感染の場合には医療機関による治療が求められますが、潜在患者が830万人もいると推定されている過活動膀胱や、女性の2000万人が悩まされている腹圧性尿失禁には骨盤底筋体操が絶大な効果を発揮します。
 [骨盤底筋体操]
 膣や肛門を締めたり緩めたりを繰り返すことにより、自分で意識しなくても、尿道や他の骨盤底筋群も一緒に締まり、下腹部、股間、肛門の一帯にひろがる筋肉を強くします。 余分な力を抜いて、股間を身体の中へ吸い上げるような感じで膣と肛門を締め、5秒くらい締めたら次は緩めます。これを数分間(できれば10分くらい)続けて行います。締めるコツをマスターすればいつでもどこでもできるので気づいたときに行うようにしましょう。女性は出産などでどうしても骨盤底筋群が弱くなってしまいます。骨盤底筋群を強くして薬や尿漏れパンツと「さよなら」しましょう!

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